幕物語
みんなは知っているだろうか。
なんて、偉そうに言ってみても、僕だってそれを知ったのはついほんのさっき、たった30分も前の事だった。
僕の名前はいずくかける。どこにでもいる、ただただ平凡な、取り柄も人気もあったもんじゃない、言ってしまえば、とりたてて珍しくも無い物書きだ。
とりあえず、これを見て欲しい。
これを見て、僕の話を聞いてほしい。
これは、西尾維新先生の人気小説、『化物語』のコミックスが累計発行部数100万部を突破したことを記念して、講談社の社屋に掲げられた同作の、縦13メートル、横2.1メートルの巨大垂れ幕である。
今や化物語を知らない人は少ないだろう。
少なくとも僕の知人に知らないものはいない。
だから、化物語を知らないものはいないだろう。
そんな人気作だから、コミックス100万部を達成した事も、記念に垂れ幕が掲げられた事も、もしかしたらとりとめのない、ニュースと呼ぶに足らない出来事なのかも知れなかった。
そう思っていた。
しかし。
僕は目を疑った。
週間少年マガジンでは、この巨大垂れ幕を
応募者一名にプレゼント
という暴挙にでる。
一体何を考えているんだ。
常識的に考えても考えなくても、こんな巨大垂れ幕を貰ったところで
超巨大粗大ゴミにしかならない。
これに関する公式のコメントが、
「え? どこに飾るの?」
である。
そんな事、こっちが聞きたい。
担当者の頭には、怪異が巣くっているとしか思えなかった。
化物語、大好きです。